思い込みたい強引男|長谷部さま

金曜日だというのに、あまり混んでいない店内。

 

時間は21時を過ぎた。

 

「しんこさん、フリー1名様お願いします!」

「は~い」

 

わたしの名前はしんこ。この店に入って1週間が過ぎた。

ここは、都心から少し外れたとある繁華街。高級ではなく場末でもない、普通の「姉キャバ」といったところだ。

 

そう。「姉キャバ」。

 

クラブ、キャバクラ崩れの、高いプライドを持ち合わせ、そして歳を重ねて若い子たちと戦えなくなった女たちのたまり場だ。

 

そしてわたしも然り。

 

「いらっしゃいませ、しんこです」

シルバーのドレスの裾を少し上げ、わたしはその男の隣りにスラリと腰を落とした。

 

「こんばんは~、おじゃまします♡」

男は顔を動かさず、目だけで私を見ると、興味無さそうにこう言った。

 

「新人?」

「はい!先週入ったばかりで…と、いうことはあなた様は常連様ですね?笑」

「…いや、はじめて。さっきら下で兄ちゃんに引っかかってさ~ 仕方なくだょ~」

(…ッくっだらね、そういうの100万回くらい聞いてるわ~)

 

わたしは笑いながら、テーブルの上を確認した。吉四六のボトルに天然水。キャメルの煙草に時代遅れのジッポ。

そして、これみよがしにBMWのキーが置いてある。

(酒飲みくるのにわざわざテーブルに車のキーを置くなんて…なにアピ?笑)

 

「随分高いボトルを飲まれる一見様ですねー笑」「あ、BMW乗られてるんですねー!カッコいい♡」

とりあえず…褒めてみた。

 

すると彼は「なんか飲めば?」といい、ニヤつきながら身体をわたしの方に向け、膝が付くほど近づいて座り直す…

 

「嬉しい~!ご馳走様になりま~す!」

 

彼の名前は長谷部さま(仮名)。59歳。バツイチ、子あり、孫ありだそう。

太った身体を私に向けた瞬間、彼はわたしにロックオンしたようだ。

 

(落ちた…)

 

この世界はロックオンした方が劣勢だ。それをひっくり返すのは至難の業。

そしてわたしはそれを本能で感じ取る…あの時の悪寒は今でも忘れない。

 

そして彼は顔を近づけ…こう言ってきた。

「君、たぶんボクの事、タイプだと思うよ?」

 

(えーーーー!どゆこと??笑 すっごい思い込み!?)

 

「ハハハッ~ わかります~?」

 

わたしは少しだけお尻をずらし、彼から離れた…

 

TO BE CONTINUE…