お見合いパブ勘違い男|ヤスさん

「こんばんは~、しんこです~」

 

30代真ん中くらいのフリー2名様。どうやら友達同士の飲み会流れのよう。

 

1人は茶髪のナルシスト系、もう1人はマスクをした小柄で気弱そうな人だ。

 

わたしが黒服に促された席は、マスク男の隣りだった。

 

(ハズレ~笑)

 

「お隣失礼しま~す」

 

すると……気弱そうに見えたマスク男が、若干目を見開いた感じがした。

 

「え?君何ちゃん?」

「しんこです。はじめまして♡♡」

「新人?」

「はい!まだ1週間くらいです!」

「いくつ?」

「ハハハッ…39歳です笑」

「へぇー!もっと若く見えるね~!」

「ほんとー?嬉しい~!」(…ホントは44歳だけどね笑)

「え?独身?子供は?昼間仕事してるの?」

 

(おいおい…お見パブじゃないんだから)

 

「ハハハッ…なんか質問攻め~ 1個づつ~!ちなみにお兄さんは何さんって呼べばいいですかー?」

このマスク男はヤスさん(仮名)。見た目より若く36歳との事。モソモソ話して、目を皿のようにして人を見る、正直気持ちが悪い男だ。

 

ヤスさんは身体をわたしのほうに向け、興味深げに顔を覗き込む。

 

(はい、ロックオン。わぁ~、でもちょっと勘弁だわ~)

 

すると、まだ着いて5分も経っていないのに黒服がタイムアップを伝えに来た。

 

「お話中すみません。そろそろお時間となります。ご延長はいかがでしょうか?」

 

はたして、自分が着いた事で延長してくれるのか?ここはキャストとしてもとても気になるところだ。

 

「え?あ、帰る帰る!!今日は1時間で帰る!お金ないからね!」

ヤスさんはすぐさま財布を取り出し、帰る気満々である。お連れ様もウンウン頷き同意のご様子。

 

(ちーん。はいはい今日はね。)

だいたい今日は帰るという言葉は、いつもワンタイムと同義語だ。『今日は延長』と言うことはまずない。

 

素早くテーブルを確認すると、ハウスボトルにハウス水。女の子のドリンクも出ていない。もちろんノーオーダーだ。

 

(はい、帰っていただいてけっこーデース)

常々思うが、女の子にドリンクも出さない男は楽しいのだろうか?自分だけで酒を飲み、相手に気遣いも出来ない飲み方をするのは正直ダサい。

 

「えー!帰っちゃうんですか?まだ着いたばっかりなのに~」

 

とりあえず、わたしも黒服の手前、適当にアピってみたり。

 

するとこのマスク男、もといヤスさん。矢継ぎ早にこう言い放った。

 

「早く!早く!! 電話番号教えて!! 休みいつ? いつ暇?」

 

(サイテー…)

 

キャバ嬢として、お客様に名刺をお渡しするのはマナーだ。お客様から受け取りを拒まれた場合を除き、名刺をお渡しし店で隣に置いておく子を選んでいただく。これが王道のシステムなのである。

 

ところがどっこい。間違っても今日あったばかりのお客様に… 自分の休みや余暇のためにお渡しする名刺なんてないのです。

 

にもかかわらず…。(おいおい…お見パブじゃないんだから。2回目~)

 

後日わたしは、お見パブと勘違いしているこのヤスさんに連絡先を教えたことを心から後悔することになったのです。

 

TO BE CONTINUE…

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