外でしか会わない客|長谷部さま

「長谷部さん、展開早いな~♥」

 

 

「カードも切れたしさ、お前と付き合ってやるよ!」

と、ドヤ顔で、冗談とも判断がつかない調子で言ってきてから数秒…フリーズしてしまったわたしの脳みそはやっと動き出した。

 

(あーー!ビックリ…なんでしょ、この人)

 

「え?嫌なの?」

 

(いやよ!!)

 

「イヤとかじゃなくて…今日あったばかりじゃないですか~」

 

「あ、俺営業とか効かないから。俺もうこういうところ慣れてるから外でしか会わないよだって付き合ってるんだから♥ね?

 

(いやいやいやいーーや!付き合ってませんから!)(ね?じゃねーーし!)

たまにいるのです。外で会うことをありきとして女の子を指名する間違った遊び方をするお客様が…

 

そもそも、ここはキャバクラ(姉キャバ)。「お店で女の子を隣に置いて、お酒を楽しむところ」という前提を捨てて自己流に解釈してしまうというのはいかがなものか。

 

こういうお客様でもしっかりと拾っていく奇特なキャバ嬢を、本当に尊敬しつつわたしはこう言った。

 

「わたし、お客様とプライベートでは会わないことにしているんですよ~(ニコッ)」

 

「・・・・・・」

 

長谷部さま、フリーズ。

 

「もっと仲良くなってから外でのお付き合いを考えますね!」

 

すると長谷部さま、なんと食い下がってきた。

 

「え?じゃー、友達からでもいいよ!友達とだったら外で会うでしょ?しんこがいいって言うまで手出さないし。っていうか、俺そんなにあせってないしさ!」

 

(ほぅ…突っ込みどころがたくさんあり過ぎて…うーん)

 

その1 友達でも嫌です。

その2 友達でもないから外でも会いません。

その3 会った初日に断りもなく呼び捨てにしないでください。

その4 わたしがあなたを良いと言って受け入れることはありません。

その5 焦っていないならゆっくり口説けや!!

 

そんな一連の話を耳をダンボに聞いていた男性スタッフはほくそ笑みながら近寄ってきた。

 

「しんこさん、少々お借りします…」

 

「え?なに?指名したのに?どっか行くの?」

 

「すぐに帰ってきますね!ちょっとお客様の送り出しをしてきます~」

 

ところで、男性スタッフ(黒服)は意外に話を聞いている。女の子の表情も、お客様の表情も、お客様の手の位置もしっかりと見ているのだ。

 

長谷部さまは少しムスッとしたかと思ったが、キャメルの煙草を口にくわえ、自ら時代遅れのジッポで火をつけこう言った。

 

「おぅ、行ってこい!稼いでこいよ!後でな~」

 

(すっかり彼氏気取りじゃないかい(笑))

 

しかしわたしは決めていた。この人はいらないと。

 

送り出しはスタッフについてきてもらい、返信もおざなり。

 

長谷部さま、短い間でしたがありがとうございました。素敵な彼女を見つけてくださいね。

 

さようなら~

 

思い込みも過信も、魅力を削る行為ですね。お気を付けくださいませ…

 

END

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です